角のような頭部の突起に鮮やかなグリーンの体色が印象的なエボシカメレオンは、ギョロギョロと左右の目を別々に動かして辺りを伺う様子や、長い舌で餌を捕らえる仕草がとてもユニークな爬虫類です。
カメレオンの中でも比較的丈夫で、初心者でも挑戦しやすい種類として人気があります。
しかしその一方で、飼育に際していくつか注意したい点があるのも事実で、特に温度管理や、湿度調整といった環境づくりは力を入れたいポイント。適切な環境を用意できれば、健康に長く飼育を楽しむことができます。
この記事では、エボシカメレオンの特徴から飼育に必要な設備、餌の与え方、購入方法まで詳しく解説します。
これからエボシカメレオンを飼いたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
エボシカメレオンとは

エボシカメレオンは、イエメンやサウジアラビアなどアラビア半島に生息する、カメレオンの代表的な種類です。
野生下では標高3,000m近い山岳地帯から海岸沿いの低地まで、幅広い環境に適応して暮らしています。
ペット用に一般にも広く流通しており、爬虫類専門店はもちろん大型のペットショップなどでも見かけることがあるでしょう。繁殖が比較的容易なため流通量が多く、ベビーからアダルトまでさまざまなサイズの個体が販売されているのも、初心者から飼育がしやすいとされるポイントです。
体色は基本は鮮やかなグリーンですが、気分や体調、温度などによって黄色や茶色、青みがかった色に変化することも。この体色変化はカメレオンならではの特徴で、飼育していると日々違った表情を楽しめます。
エボシカメレオンの特徴

エボシカメレオンは見た目や生態において、他の爬虫類にはない独特の魅力を持っています。頭部のトサカのような突起や、左右独立して動く目、体色変化などはその代表的な特徴です。
ここでは、エボシカメレオンの体の特徴や寿命、性格について詳しく見ていきましょう。
トサカがチャームポイント!オスメスの体格の違いと寿命について
エボシカメレオンの最大の特徴は、頭部にある大きなトサカ状の突起(カスク)です。
カスクはオスの方が大きく発達し、成長とともに高さを増していきます。メスにも小さなカスクがありますがオスほど目立たないため、性別を見分ける時の目安になるでしょう。
体長はオスで50~60cm、メスで30~40cm程度とこちらもオスの方が大きく育つ傾向があり、カスクを含めると成長したオスのエボシカメレオンはかなりの迫力です。
平均体重はオスで150~200g、メスで100g前後、しっかりとした骨格と筋肉を持つがっしりとした体つきをしています。
寿命は飼育下で5~8年程度とされていますが、適切な環境で飼育すれば10年近く生きることもあるようです。
長く付き合える相棒として迎える際は、飼育環境の管理を継続できるかどうかをしっかり検討しておきましょう。
神経質だけど飼育しやすい種類
エボシカメレオンはカメレオンの中では丈夫で飼育しやすい種類とされていますが、基本的な性格はとても神経質です。
飼育者の急な動きや大きな音にストレスを感じやすく、過度なハンドリングは体調不良の原因になることも少なくありません。
どちらかと言えば、スキンシップよりも観賞を楽しむ飼育スタイルが向いているでしょう。
ただ、性格には個体差があり、中にはハンドリングに慣れる個体もいます。無理に触ろうとせず、日々のお世話を通じて少しずつ距離を縮めていくのがおすすめです。
縄張り意識が強く特にオス同士は激しく争うことがあるので、基本的には1匹ずつ単独で飼育するようにしてください。
繁殖を目的とする場合でも普段は別々のケージで管理し、必要なときだけ同じ空間に入れるといった工夫が必要になります。
エボシカメレオンの飼育環境の整え方

エボシカメレオンを健康に飼育するには、温度や湿度、紫外線といった要素も細かく管理する必要があります。
また樹上棲のカメレオンであることから、高さのあるゲージを使って本来の生態に近い環境を用意してあげましょう。
ここでは、飼育に必要な設備とセッティングのポイントを解説します。
飼育ゲージは高さを重視しよう
エボシカメレオンは本来木の上で生活する習性があることから、飼育環境でも好きに上り下りができる環境を整えてあげると落ち着きやすいです。
そこで飼育ゲージは、横幅よりも高さを重視して選ぶと良いでしょう。最低でも高さ90cm以上、できれば120cm以上のケージを用意すると、上下運動ができてストレスも軽減されます。
ケージの素材はサイドがメッシュになっているタイプがおすすめです。通気性が良く、湿気がこもりにくいため、適した環境を維持しやすくなります。
爬虫類用のガラスケージでも飼育は可能ですが、この場合は空気の流れを確保できるレイアウトを意識してください。
床材は爬虫類用のマットか、キッチンペーパーなどのペーパー類を敷きます。見た目を気にしないのであれば、ペーパー類の方が掃除がしやすいです。
保温器具で適温を保つ
- 昼間:26~30℃
- 夜間:18~24℃
程度です。
ケージ内に暖かい場所と涼しい場所を用意し温度勾配を作ると、カメレオン自身が快適な場所を選べるようになります。
まずバスキングライトを設置し、ホットスポットが32~35℃程度になるよう調整してください。
その上で、エアコンや上部ヒーター、保温球を併用してケージ全体の保温をすると効果的です。保温器具はケージの大きさやバスキングライトのワット数を基準に調整します。
温度計は複数設置し、ケージ内の高い位置と低い位置の両方を測るようにしましょう。
紫外線ライトは必ず設置する
エボシカメレオンの飼育において、紫外線ライトは重要なイテムです。
紫外線の中でも特にUVBを浴びることでカメレオンは体内にビタミンD3を生成し、カルシウムを効率的に吸収できます。
紫外線が不足すると、骨が変形したり成長不良を起こしたりするクル病のリスクが高まるため、予防の意味でもケージ内に必ず爬虫類用のUVBライトを設置しましょう。
エボシカメレオンには、UVB5.0〜10.0程度の製品が最適です。
また紫外線ライトは使用していると徐々に紫外線の出力が落ちていくため、6ヶ月~1年ごとに交換する必要があります。
点灯していても、紫外線が出ていない可能性があるので交換時期は必ず守るようにしてください。
登り木や植物でレイアウトしよう
樹上性のエボシカメレオンにとって、登り木や植物は生活の基盤となるアイテムです。
太さの異なる枝を複数組み合わせて立体的にレイアウトすることで、自然に近い環境を整えられます。
登り木は天然の枝やコルク、市販の爬虫類用の流木などが使えます。
直径がカメレオンの腕の太さと同じくらい、もしくは少し太めのものを選ぶと掴みやすいでしょう。枝同士をつなぎ合わせて複雑なルートを作ると、運動量が増えて健康維持につながります。
植物はポトスやモンステラ、フィカスなど高温多湿でも育つ、生きた観葉植物がおすすめです。見た目も美しく湿度管理にも役立ちます。
もし、観葉植物の手入れが大変ならばフェイクグリーンを活用するのも方法です。枯れる心配がなく汚れても洗えるので、手軽に清潔な状態を保てます。
霧吹きで湿度を管理しよう
- 昼間:50~70%
- 夜間:70~80%
程度を目安とします。
湿度が低すぎると脱皮不全や体調不良を起こすことがあるため、霧吹きでこまめに湿度を補いましょう。
霧吹きは1日2~3回、朝と夕方を中心に行うのが基本です。
ケージ内の植物や壁面に吹きかけ、全体がしっとりする程度に湿らせてください。水滴がケージ内に残っていればカメレオンが舐め取って飲むこともできます。
定期的な霧吹きが難しいときは、自動噴霧装置(ミストシステム)を活用するのがおすすめ。タイマー設定で自動的に霧を噴射してくれるため、留守中や夜間の管理が楽になります。
湿度計を設置して数値を確認しながら、霧吹きの回数や量を調整していくと、より正確な管理が可能です。
エボシカメレオンの餌と水分補給

エボシカメレオンは肉食傾向が強く、生きた昆虫を主食とします。
餌の種類や与え方、水分補給の方法を理解しておくことで、カメレオンの健康を長く維持できるでしょう。
ここでは、適切な餌の選び方と給餌のポイント、水分補給の工夫について解説します。
餌は活きた昆虫がメイン
エボシカメレオンは、動くものに反応して長い舌を伸ばして捕食する習性があるため、冷凍や乾燥の餌ではなかなか食いつきません。
慣れればピンセットから食べる個体もいますが、基本はコオロギやデュビア、レッドローチなどの生きた昆虫を与えましょう。
給餌の頻度は成長段階に合わせて調整します。
ベビーサイズの頃は成長のためにエネルギーを必要とするため、毎日、食べるだけ与えて大丈夫です。亜成体から成体になるにつれて代謝が落ち着くため、週に3〜4回程度に減らしていきます。
また、餌となる昆虫にはカルシウムパウダーやビタミン剤をまぶしておく”ダスティング”を行うのが効果的です。
不足しがちな栄養を補いことで、骨の形成不全や代謝性骨疾患を予防できます。
エボシカメレオンに水分補給させる方法
エボシカメレオンは止まっている水を水として認識しにくく、水入れから直接水を飲むことがほとんどありません。
そのため、葉や壁面に水滴をつけて舐めとらせる形で水分補給をさせる必要があります。
最も簡単なの、霧吹きでケージ内全体に水を吹きかけておく方法です。朝と夕方の2回、たっぷりと霧を吹いて植物や登り木に水滴をつけてあげましょう。
カメレオンが水滴を舐めている様子が見られれば、水分補給できている証拠です。
もう少し工夫をして、ドリッパーという水を一滴ずつ落とす器具を使う方法もおすすめ。ケージ上部に設置し、葉の上にポタポタと水を落とすことで、カメレオンが水滴に気づきやすくなります。
ドリッパーは常時設置しておくと、好きなタイミングで水分を摂れるため便利です。
市販品も販売されていますが自作もできるので、ご興味ある方は挑戦してみましょう。
エボシカメレオンの購入方法

エボシカメレオンを長く飼育するには、購入場所の選び方や個体の見極め方が重要になってきます。健康な個体を選ぶことで、その後の飼育がスムーズに進むでしょう。
ここでは、おすすめの購入先と、実際に個体を選ぶ際にチェックすべきポイントをご紹介します。
おすすめの購入場所
エボシカメレオンは、爬虫類専門店やエキゾチックアニマルを扱うペットショップで購入できます。
専門店では飼育経験豊富なスタッフから直接アドバイスをもらえるため、初心者の方には特におすすめです。個体の管理状態も良好なことが多く、安心して購入できるでしょう。
専門店ではない大型のペットショップでの購入を検討しているときは、お店に爬虫類の知識が豊富なスタッフがいるかどうかを確認することをおすすめします。
店内の環境が清潔で、ケージ内の温度や湿度がきちんと管理されているかもチェックポイントです。
また、爬虫類関連のイベントで生体を販売しているケースもあります。このようなイベントはブリーダーの方から直接個体を購入できる貴重な機会となっており、血統や飼育履歴といった詳しい情報を得ながら、多くの個体を吟味できるのが魅力です。
ただし、購入後のアフターフォローが受けにくかったり、情報を精査するのに経験が必要だった利することがあるため、ある程度の飼育知識がある方向けといえます。
個体選びのポイント
複数の個体から選ぶときは、まず全体的な様子をよく観察しましょう。
元気に動き回っているか、枝にしっかりと掴まっているか、体色が鮮やかで発色が良いかなどが、健康な個体の目安です。
目がしっかりと開いていて、窪んでいないかも重要なチェックポイントになります。目が窪んでいるのは脱水症状の可能性があり、飼育環境に問題があったことが考えられます。
四肢や尾に欠損がないか、皮膚に傷や腫れがないかも確認してください。
また購入前には、お店のスタッフやブリーダーに飼育方法や餌の種類、給餌頻度などを確認しておきましょう。購入後も同じ環境を再現することで、新しい環境にスムーズに適応できます。
不明な点があれば遠慮せず質問し、納得してから迎え入れることが大切です。
まとめ:エボシカメレオンとは!特徴から飼い方と飼育用品、個体の購入方法

エボシカメレオンの特徴や飼育方法、購入時のチェックポイントについて解説しました。
エボシカメレオンはトサカ状の突起と体色を変化させる独特な習性が魅力の、ユニークな爬虫類です。
神経質な性格ですが、カメレオンの中では丈夫で飼育しやすい種類とされており、初心者でも挑戦しやすいでしょう。
樹上棲のカメレオンであることから、飼育環境でも流木を使って高さを出し、温度や湿度を適切に管理するのが上手に飼育するポイントです。
また壁面や葉に水滴を付けて水分補給をさせる工夫をすることで、より健康に育ってくれます。
エボシカメレオンは適切な環境さえ整えれば、長く付き合える魅力的なペットです。日々の観察を楽しみながら、大切に育ててみてください。

幼少の頃より生き物が大好きです。身近なカナヘビからオオトカゲまでさまざまな爬虫類を飼育してきました。また水族館に勤務していた時は、爬虫類コーナーの担当もしていました。これまでの経験を活かして、爬虫類飼育が楽しくなるようなコラムを紹介していきます。




























