フトアゴヒゲトカゲは、人に慣れやすく温和な性格から、とても飼いやすく人気の高い爬虫類です。
トゲ状の鱗がある下アゴが膨らんだり、黒くなったりする様が顎ヒゲに似ている様からフトアゴヒゲトカゲと名が付きました。
この記事では、フトアゴヒゲトカゲの特徴や飼育方法、その魅力まで詳しく解説します。
フトアゴヒゲトカゲとは

フトアゴヒゲトカゲは、オーストラリア原産の中型トカゲで、温厚な性格と飼育しやすさから人気の高い爬虫類です。
成体(アダルト)の体長は大体40~50cmほどで、その約半分が長い尾になります。
片手でハンドリングできるぐらいのサイズ感というと、イメージがつきやすいのではないでしょうか。一般的にメスよりオスの方が、大きくなる傾向があります。
昼行性で日中に活発に動き回るため観察がしやすく、適切な環境を整えれば長期飼育がしやすいでしょう。
また、人に慣れやすく、飼育を続けていくうちにハンドリングを受け入れてくれる個体が多いのもポイント。見た目のかっこよさと愛嬌のバランスがよく、「恐竜みたいでかわいい!」と初めて爬虫類を飼う方から経験者まで幅広く支持されています。
カラーモルフと呼ばれる色彩のバリエーションが豊富で、レッド・オレンジ・イエローなど個体ごとに違った美しさを楽しめるところも、フトアゴヒゲトカゲが長年愛されている理由の一つです。
フトアゴヒゲトカゲの特徴と魅力!

フトアゴヒゲトカゲの大きな特徴といえば、平たい体つきと力強い四肢、そして名前の由来でもあるのど元のトゲ状の鱗でしょう。
体を守るゴツゴツの硬そうな皮膚は、実際に触れるとゴムのような弾力があります。
トゲの感触はゴム製の歯間ブラシのような柔らかいけれどザラっとした質感、たるんだアゴ部分はふわふわとしていて触り心地は抜群です。
また、昼行性で生活リズムが安定しており、人間の生活時間帯と近いことからペットのように触れ合って魅力を感じられます。
現在は「好きな時にトカゲと触れ合いたい!」という理由もあり、在宅ワークを選ぶほどで、フトアゴヒゲトカゲの魅力にすっかり取りつかれています。
フトアゴヒゲトカゲの寿命
フトアゴヒゲトカゲの平均寿命はおよそ5~10年ほど。飼育環境が整っていると15年近く生きる個体もいます。
爬虫類の中では比較的長生きする種類で、成長の早さに対して寿命が比較的長い点が特徴です。
この“比較的長生きする”という特性は、飼い主にとって大きなメリットでもあります。
一緒に過ごす時間が長い分、個体の性格を把握しやすく、信頼関係の構築や生活リズムを合わせて生活できるなど、まさに家族の一員のように深い関係を築くことができるでしょう。
また、フトアゴヒゲトカゲは成長後のサイズが安定しており、環境さえ整えれば体調管理もしやすいため、長期的に安心して飼育できる点も魅力です。
長い時間をかけて一緒に暮らす相棒として、その存在感や愛着は年々大きくなっていきます。
フトアゴヒゲトカゲの飼育方法

フトアゴヒゲトカゲの飼育では、広さのあるケージ、適切な温度・紫外線環境、バランスのとれた食事の3つが大切です。
ここでは、初めての方でもイメージしやすいように、必要な設備やレイアウトの基本をわかりやすく解説します。
飼育ケージは90cm以上がおすすめ!
フトアゴヒゲトカゲは成長すると全長40~50cmほどのサイズになるため、健康に長生きさせるには、横幅90cm以上のゆとりのあるゲージを用意しましょう。
幅90cm×奥行45cm×高さ45cmのいわゆる90cm規格ケージであれば、ホットスポットやクールスポットなどの温度勾配が作りやすく、バスキングライト・UVライト類もバランス良く設置できます。
スペースに余裕があれば120cmケージもおすすめで、レイアウトの自由度が上がり、フトアゴヒゲトカゲがより伸び伸びと過しやすいです。
広いケージほど運動量が確保しやすく、肥満予防やストレス軽減にも繋がります。

どうしても大きなケージを置くスペースが無い…という場合は、横幅60cmケージでも飼育可能ですが、体長50cm近くの成体には手狭になってしまいます。
その場合は、ゲージから出して部屋の中を散歩させる”部屋んぽ”を取り入れて運動量を補ってあげましょう。
ただし、部屋んぽ中も温度管理は必須です。
部屋の室温を22~28℃に保ち、必要に応じて室内にも簡易的なバスキングスポットを用意してあげます。
また、誤飲につながる小物やホコリが床に落ちていないかも必ずチェックし、安全に配慮してから実施してください。
温度勾配を意識したレイアウト
フトアゴヒゲトカゲのケージ内レイアウトで重要なのが、バスキングスポットとクールスポットを作ることです。
フトアゴヒゲトカゲは変温動物のため、自分で体温を調整することができません。
自然界では体温に応じて日なたと日陰を行き来して自分で体調を整えていることから、飼育環境にも爬虫類用ライトが当たる温度の高い場所と低い場所を作って、好きな時に日向ぼっこができる環境を整えてあげましょう。
| エリア | 温度 |
|---|---|
| バスキングスポット | 35〜40℃ |
| ケージ中央 | 30℃前後 |
| クールスポット | 25〜28℃ |
程よい日光浴は消化や代謝を上げたり、カルシウムの吸収に必要なビタミンD3を体内で生成したりといった良い効果が期待できます。
また、ケージ全体を均一な温度にすると逃げ場がなくなるため、必ず温度勾配を作ることを意識してください。
バスキングスポットの作り方
バスキングスポットには、以下の3つの光環境を整えることが大切です。
- バスキングライト:強い光と熱を発生させ、体温上昇を助ける
- UVライト(UVB):カルシウム吸収に必要なビタミンD₃を合成するために不可欠
可視光線:昼夜のリズムを作る。UVライトの直視を防ぎ目の健康維持にも重要
バスキングライトとUVライトを併用して、日なたを再現するイメージです。この時注意したいのがUVライトで、UVライトから発せられる光は爬虫類には眩しいと感じられず、雪目などの目のトラブルを引き起こす原因となります。
雪目の予防には、UVライトをバスキングスポットの真上から当てて目にあたりづらくするか、爬虫類が認識できる可視光線と紫外線を同時に照射できるタイプのライトを使用する方法が有効です。
クールスポットの作り方
フトアゴヒゲトカゲが体温を下げたいときに移動できるクールスポットも必要です。
- ケージの片側にライトを集めて配置し、反対側を暗めで涼しい場所にする
- クールスポット側にはライトを当てない、または弱い光にする
- 光を遮るレイアウト(流木やシェルターなど)を置き、光の強さが自然に変わるようにする
このような方法でバスキングスポットからクールスポットにかけてなだらかに温度差をつけると、フトアゴ自身が移動しながら体温を調整できます。
健康管理のためにも、バスキングスポットとクールスポットの両方を必ず準備しましょう。また、夜間はバスキングスポット用のライトは必ず消灯します。
その間ケージ内の温度が下がりすぎないよう、保温ライトをサーモスタットに接続し、25~28℃前後を維持できるように調整しましょう。
温度計を複数設置しよう
常にケージの中の温度を確認できるように、温湿度計は必ず設置しておきましょう。
朝・夜の温度差や季節の変化にも気づきやすく、体調管理にも役立ちます。
ゲージ内の温かい場所と涼しい場所の二か所に設置して、全体の温度のチェックすると、フトアゴヒゲトカゲにとって快適な環境を保ちやすいです。
底床材について
床材は誤って飲み込んでも危険がないものを選びます。
砂や細かいチップは誤飲すると体の中で詰まってしまうことがあるため、慣れないうちはペットシーツやキッチンペーパーなど、安全で扱いやすい床材がおすすめです。
フトアゴヒゲトカゲの餌

フトアゴヒゲトカゲは雑食性で、野菜・葉物の植物質と昆虫などの動物質をバランスよく食べます。
成長段階に応じて野菜と昆虫の比率を調整することが大切ですが、近年は栄養バランスの整った人工フードが多数販売されているので、状況に応じて使い分けるのもおすすめです。
野菜の代わりに使えるタイプや、昆虫の栄養を補助するタイプもあるため、うまく取り入れてみましょう。
成長段階による餌量の目安と与え方
成長段階による餌の量や動植物のバランスの目安は以下の通りです。
| 時期 | 体長の目安 | 野菜・昆虫・人工フードのバランス | 餌の頻度 |
|---|---|---|---|
| ベビー期 (〜生後3〜4か月) |
〜20cm | 昆虫メイン 昆虫8:野菜1:人工フード1 |
1日2回 |
| ヤング期 (生後4〜8か月) |
20〜30cm前後 | 昆虫やや多め 昆虫6:野菜2:人工フード2 |
1日1回 |
| ヤングアダルト期 (生後8か月〜1歳前後) |
30〜40cm前後 | 野菜中心へ移行 昆虫3:野菜4:人工フード3 |
1日おき or 1日1回 |
| アダルト期 (1歳〜) |
40〜50cm前後 | 野菜メイン 野菜7:人工フード3 |
3日に1回 (昆虫はおやつ程度。人工フード中心でも可) |
ベビー~ヤング期は成長にエネルギーを消費するため、基本的には欲しがるだけ与えてOKです。
人工フードは、いつでも食べられるようにケージ内に常設しておくと良いでしょう。
お腹が空いたときに繰り返し食べることで、人工フードに早く慣れてくれます。
アダルト期は肥満予防のため、体重や排便のペースを確認しながら給餌頻度を調整することが大切です。
フトアゴヒゲトカゲの肥満は内臓、特に腎臓に負担がかかりやすく、腎不全などの病気の原因になることもあります。
そのため、アダルト期は食事の量・頻度だけでなく、定期的な体重管理も意識していきましょう。
与え方は野菜 → 昆虫の順番が基本です。先に嗜好性が高い昆虫を与えてしまうと、野菜の食いつきが悪くなってしまいます。
どうしても野菜を食べないときは、昆虫パウダーをかけて嗜好性を上げてみてください。
また、カルシウム不足を防ぐため、野菜や昆虫にはカルシウムパウダーをダスティングします。さらに、週に1回程度ビタミンD3配合のカルシウム剤を添加してあげると安心です。
ちなみにビタミンD3はカルシウムの吸収を助ける、成長期の骨格形成や健康維持に欠かせない栄養素ですが、自然排出されず体内に蓄積しやすいため、与える頻度は週1回程度に抑えましょう。毎日与えると過剰摂取になる可能性があります。
水分摂取の方法
脱水を防ぐため、飲み水は毎日必ず用意してあげてください。
ただし、フトアゴヒゲトカゲは水入れの水面を“水”として認識できず、そのままでは飲まないことがあります。
水を飲んでいる様子が無いときは、指で水面をピチャピチャと動かして「ここに水があるよ」と教えてあげると、水の存在を理解してくれるようになるでしょう。
それでも認識しない場合は、霧吹きで口元に軽く吹きかける、スポイトで少量ずつ与えるなどの方法を併用すると良いです。
フトアゴヒゲトカゲの種類(モルフ)と価格

フトアゴヒゲトカゲには、体色や模様の違いによって”モルフ”と呼ばれる多くの種類が存在します。
野性的な風合いが楽しめるノーマルから、希少性の高い真っ白な体色のハイポゼロまでその見た目は多種多様です。
同じフトアゴヒゲトカゲでもモルフごとに見た目や流通量、人気、価格に差が出るため、お好みのモルフを選ぶと、飼育の楽しさを感じやすいでしょう。
代表的なモルフと価格
現在流通しているフトアゴヒゲトカゲの、代表的な種類の値段と特徴をまとめました。
| モルフ名 | 価格の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| ノーマル(ワイルドタイプ)> | 1万円〜2万円前後 | 野性味を感じられるグレー~茶褐色の体色。最も入手しやすく、丈夫で飼育しやすい基本モルフ |
| レッド | 2万円〜4万円前後 | 赤みの強い個体は人気が高く、発色の良さで価格が変動 |
| イエロー | 2万円〜4万円前後 | 明るい黄色の体色が特徴。初心者から上級者まで人気 |
| ハイポ (ハイポメラニスティック) |
3万円〜6万円前後 | 黒色素が少なく、透明感のある体色が特徴 |
| ゼロ | 6万円〜10万円前後 | 模様がほとんどない白系モルフで希少性が高く、価格も高め |
| ハイポゼロ | 8万円〜15万円以上 | ハイポとゼロの特徴を併せ持つ希少モルフで、発色の美しさから特に人気が高い |
この他にも鱗に透け感があって黒目がちな瞳が特徴の『トランス』や、体表のトゲが少なく滑らかな質感の『レザーバック』など、とにかく種類が豊富なのがフトアゴヒゲトカゲ大きな特徴です。
深紅の体色を持つ『ブラッドレッド』や、独特の斑点模様が入る『パラドックス』など、希少性の高いモルフになると10万円を超える高額個体になることも珍しくありません。
フトアゴヒゲトカゲを購入するには
フトアゴヒゲトカゲをはじめとした爬虫類を購入する際は、販売者による対面での事前説明が動物愛護法で義務付けられています。
これは、飼育環境や必要な設備、生体の状態などを直接確認し、購入者が正しく飼育できるようにするための重要なルールです。
このことから、フトアゴヒゲトカゲが購入できる場所は、ペットショップや、ブリーダーが出展する爬虫類イベントなど、対面販売が行われる場に限定されます。
ペットショップは初心者向けのサポートが受けやすく、必要な飼育用品を一度に揃えられるのが魅力です。
特に爬虫類を専門に扱うショップはスタッフの知識が豊富で、生体の健康状態やモルフの特徴、飼育環境の整え方など、専門的なアドバイスを受けられます。
購入後のフォローにも対応している店舗が多く、初めての方でも安心して迎え入れられるでしょう。
一方、多くのブリーダーが参加する爬虫類イベントでは、珍しいモルフや個体を実際に比較しながら選べるのが魅力です。
いずれの場合も、生体の健康状態やブリーダー・ショップの飼育環境をしっかり確認してから購入するようにしてください。
初めての爬虫類飼育で不安もありましたが、購入時に飼育環境づくりや餌の与え方など、様々なアドバイスをいただけたことで安心して迎え入れることができています。
その後も、給餌内容の相談や便秘時の対応など、細かなことまで丁寧にサポートしていただいており大変心強く感じる存在です。
飼育者が実践!フトアゴヒゲトカゲを飼うときのコツやテクニック

フトアゴヒゲトカゲとの暮らしをもっと快適にするには、ちょっとした工夫がとても役立ちます。
ここでは、飼育者が実際に行っているコツやテクニックを、分かりやすくまとめてご紹介します。
紫外線の当て方や運動の工夫、肥満チェック、ハンドリングのコツなど、ぜひ参考にしてみてください。
紫外線の当て方のポイント
フトアゴヒゲトカゲにとって紫外線UVA・UVBは、骨の健康維持や食欲・行動リズムに大きく関わります。
しかし、UVライトは「ただ当てれば良い」というものではなく、ポイントを押さえて照射することで初めて正しい効果を得られるものです。
以下のポイントを抑えて、安全かつ効果的に紫外線環境を整えましょう。
- UVA・UVBはガラス越しだと遮断される:
生体に必要なUVAやUVBは間に障害物があると、照射効率が著しく低下する傾向があります。ゲージの外側から照射した場合、天井の素材がガラスやプラスチック製だとほぼ遮断、金網やメッシュ素材でも半減されてしまい、思ったような効果が得られないことも。このことから、UVライトはできるだけ、ケージ内部に設置し直接紫外線を当てると良いでしょう。ただ、生体に近すぎても良くないため、メーカー推奨距離は守るよう注意してください。 - 紫外線が直接目に入らないよう配慮する:
先程も触れた通り、爬虫類はUVライトの光を認識するのが苦手。特にバスキングを好むフトアゴヒゲトカゲはライトにあたっている時間が長く、UVライトを直視する危険が高いです。紫外線が長時間に目にあたっていると目の健康を害す危険があるため、照射角度には十分に注意してください。直視の予防には、可視光線を併用するなどの対策が有効です。
運動不足は肥満のもと!
フトアゴヒゲトカゲはケージの中だけではどうしても運動不足になりやすく、太りやすいです。
肥満になると次のような健康面のトラブルが増加します。
- 内臓脂肪が増えて肝臓に負担がかかる
- 後ろ脚に負担がかかり歩行がぎこちなくなる
- 関節や背骨に負担が蓄積する
- メスの場合、卵詰まりになるリスクがある
- 免疫力低下で病気にかかりやすくなる
運動不足を解消するためには、意識的に“動く時間”を作ることがとても大切です。
- ハンティング運動:
コオロギやデュビアなどの生き餌をゲージ内に放して、追いかけさせると良い運動になります。ただし与えすぎると肥満の原因になるため、1~2匹で切り上げましょう。 - 部屋んぽ:
ゲージから出して部屋の中を自由に歩き回らせることで、全身運動を促します。部屋んぽの前には電源コードや段差、家具の隙間、誤飲する物はないかなどを確認し、危険を取り除いてから行いましょう。また、室温を22~28℃に調整しておくことも大切です。 - お散歩:
暖かい季節なら、日光浴を兼ねた屋外の散歩も効果的です。必ずハーネスをつけて行いましょう。カラスや猫などの外敵や急な温度変化、逃走リスクに十分注意し、常に目を離さないように注意してください。
”脇ぷに”は肥満のサイン!?

フトアゴヒゲトカゲの肥満をチェックするときに特に分かりやすいのが、前脚の付け根につく脂肪、通称“脇ぷに”です。
脇の辺りにプニッと柔らかい膨らみができていたら、肥満気味のサインかもしれません。
ただし、ベビー〜ヤング期には成長に伴う一時的なふくらみが見られることもあるため、脇ぷにチェックは体型が安定するアダルト期に行うのが良いです。
定期的な体重測定と合わせて経過を観察することで、肥満の早期発見に繋がります。
食事量や体重に変化がないのに脇ぷにだけ増えた、左右で膨らみの大きさが異なるといった場合は、腫れや疾患などの脂肪以外の原因が隠れている可能性が高いです。
明らかな異変が見られたときは、早めに爬虫類専門の獣医師へ相談しましょう。
ハンドリングのポイント

ハンドリングは、フトアゴヒゲトカゲと触れ合える貴重なスキンシップの時間です。
適切なハンドリングは、お互いの信頼関係を育てる良い機会になります。
一方、やり方を間違えるとフトアゴヒゲトカゲを怖がらせてしまうため、正しいハンドリングのポイントを押さえて行いましょう。
- 上からつかまない:
フトアゴヒゲトカゲの天敵は鳥であることが多く、上からつかむような動作は本能的に恐怖を感じさせてしまいます。ストレスを掛けないよう、必ず横や正面からゆっくりと近づけてあげましょう。 - 手のひらですくい上げるように抱っこする:
体の下に手を差し入れて、“下から支える”のが理想です。お腹・胸の下に手を入れ、もう片方の手でお尻~尾の付け根を軽く支えると安定します。 - 指先に顔が来るようにする:
ハンドリングの際、どこかへ進めそうな隙間があると歩き出してしまうことがあります。指先のように“この先へ進めない”方向に顔を向けるように抱っこすると、自然と落ち着きやすくなります。
一部の爬虫類は、身を守るために自ら尻尾を切り離す”自切”を行いますが、フトアゴヒゲトカゲには自切の習性はありません。
とはいえ、過度なストレスや驚かせるような扱いは負担になるため、ハンドリングは無理のない範囲で適度なスキンシップとして行いましょう。
繁殖に関する注意点

フトアゴヒゲトカゲは、オスメスをペアで揃えて適切な環境を整えてあげれば、自宅でも繁殖ができる生き物です。
ただ、繁殖には様々なリスクを伴うほか、飼育環境の準備や、メスの健康管理、卵の管理、孵化後の個体の終生飼育など、経験と専門知識が求められるため、正しい知識を得た上で相応の覚悟を持って挑みましょう。
以下は繁殖に挑戦するときに意識したいポイントです。
- 栄養状態が良い個体をペアリングする。
- 産卵床を必ず用意する。
- ケンカや怪我につながらないよう、発情や交尾のタイミングを見極める。
- 孵化・育成スペースを確保する。生まれた個体の販売や引き取り先が無い場合は、終生飼育する責任があります。
繁殖時に特に注意しなければならないのが、メスの卵詰まりです。
フトアゴヒゲトカゲのメスは、オスの存在や匂い、視覚刺激によって発情しやすく、相手がいなくても卵を形成してしまうことがあります。
この時、産卵のための環境が整っていなかったり、体調が万全でないと、卵が体内に詰まって命に関わる状態になる可能性があるのです。
卵詰まりの治療は病院での処置が必要になる場合もあるため、異常が起きていないか定期的な検診でチェックすることを心がけてください。
また、繁殖前に生まれた後のベビーたちをどうするのか、目途をつけておくことも重要です。
もし、ベビーの販売や引き取り先が無い場合は、飼い主が終生飼育する責任があります。孵化してから持て余すようなことが無いよう、計画的に繁殖をしましょう。
フトアゴヒゲトカゲの豆知識

フトアゴヒゲトカゲには、飼育していると少しずつ気づく習性や豆知識があります。
ここでは、知っておくと飼育がもっと安心になるポイントをまとめましたので、参考にしてください。
フトアゴヒゲトカゲの魔の3ヶ月について
フトアゴヒゲトカゲの魔の3ヶ月とは、産まれてから3ヶ月頃までの突然死のリスクが高い期間のことを指します。
フトアゴヒゲトカゲは多産であるため、どうしても体の丈夫さに個体差が出やすいです。
体が弱い子は、わずかな温度変化や水分不足でも体調を崩しやすく、それが命取りになってしまうこともあります。
一般的には、生後3ヶ月を過ぎると体がしっかりしてきて、突然死のリスクがぐっと下がると言われています。
「赤ちゃんから育ててみたい」と思う方も多いですが、ベビーは繊細で管理に気を使うため、飼育経験が浅い場合は、生後3ヵ月以降のヤング個体をお迎えする方が安心して育てられるでしょう。
ストレスマークに注意しよう

ストレスマークとは、フトアゴヒゲトカゲのお腹に複数の()のような模様が浮かび上がる現象のことです。
これは何らかのストレスがかかっているサインで、環境に不満がある時や体調が悪い時などに多く見られます。
また、同時に体全体の体色が黒くくすんだように見えるのもストレスの影響です。
ストレスマークが表れる主な原因には、次のようなものがあります。
- 温度や湿度が適切でなく、過ごしにくい状態になっている
- 便秘気味でお腹に不快感がある
- ケージに戻りたい、または逆にケージから出たがっている
- 環境が変わった・音や動きに驚いたなどの一時的なストレス
日光浴をしているときに、一時的に体全体の色が黒っぽくなることがありますが、これは紫外線をより効率よく吸収しようとする、生体の自然な反応です。
日光浴中にストレスマークが出ていても、終わったあとすぐに消えるようであれば心配はいりません。
一方、ストレスマークが数日たっても薄くならない・消えない場合は、体調不良や病気が隠れている可能性がありますので、早めに爬虫類専門の動物病院でチェックしてもらいましょう。
また、ストレスマークとは別にアゴの部分が黒くなることがあります。
こちらはストレスを感じている、発情している、威嚇している時に見られる現象で、メスよりオスの方が黒くなる傾向が強いです。中には、鏡に映る自分の姿に威嚇してしまう子もいるため、原因を特定し環境を整え直してあげましょう。
自分では動きたくない…でもうまく眠れない、といった感じです。
いつも寝ているハンモックに移動してあげると、ストレスマークはすぐに消えます。
フトアゴヒゲトカゲは部分脱皮!幻のキノコ「鼻えのき」とは!

フトアゴヒゲトカゲの脱皮は、レオパのような全身の皮が一気に剥がれる全身脱皮ではなく、部分ごとに段階的に脱げていく部分脱皮という方法で行われます。
脱皮する部分の色が少しずつ白っぽく変わっていき、自然と古い皮膚が剥がれるのですが、その際、時々キノコが採集できることはご存じでしょうか?
キノコといってもフトアゴヒゲトカゲから取れるのは、鼻の穴の古い皮のこと。脱皮殻の形状がえのきに似ていることから、飼育者の間で”鼻えのき”と呼ばれ親しまれています。
鼻えのきがスルッと抜けるのは快感ですが、基本的には自然と取れるため見えていても放置するのが理想的です。無理に引っ張らないようにしましょう。
ちなみに、耳の鼓膜の脱皮殻はエリンギに似ていることから”ミミンギ”という愛称で知られています。
ミミンギが取れた瞬間、なぜか飼い主も耳がスッキリしたように感覚がリンクして面白いです。
フトアゴヒゲトカゲあるある!特有の動作一覧!

最後に、フトアゴヒゲトカゲを飼育していて一度は目にする代表的な行動をまとめました。
フトアゴヒゲトカゲは言葉を発しませんが、仕草でしっかりと気持ちを伝えてくれます。
状況や感情に合わせて特徴的な動きをすることがあるので、仕草を覚えて観察してみると、より愛着が湧きやすいです。
| ボビング (通称:ボビボビ) |
頭を上下に素早く振る動作。 威嚇している時や、オスがメスに対して行う求愛行動の一種の場合も。 同時にアゴが黒くなることもあり、興奮状態のサインとして表れることもある |
|---|---|
| アームウェービング | 腕をゆっくり円を描くように後ろから前へ回す動作。 敵意がないことを示す服従・挨拶行動で、メスがオスの求愛に応じる際にも見られる。 ベビー~ヤング個体がアダルト個体に対し「あなたの方が上です」と伝えるときにも行われる |
| アゴ体操 | アゴを膨らませたり凹ませたりを繰り返す動き。 明確な理由は解明されていないが、伸びをするような生理的行動、体温調節に関係する動作、ストレス発散など複数の説がある |
まとめ:フトアゴヒゲトカゲの飼い方!特徴や寿命、種類、飼育のコツも解説

フトアゴヒゲトカゲは温厚で人に慣れやすく、初めて爬虫類を飼う方にも人気のトカゲです。
「爬虫類は難しそう…」と思われがちですが、初めに飼育環境をしっかり整えてしまえば、毎日のお世話はそこまで手間がかからず、初心者でもチャレンジしやすいでしょう。
ハンドリングや給餌、部屋んぽなどを通してスキンシップが取れる点も、フトアゴヒゲトカゲならではの魅力です。
飼育環境や食事内容に気を配り、こまめな体重・体調管理を続けていくことで、家族の一員として長く一緒に暮らせます。
一つ、筆者自身が飼育を通して痛感しているのが、人間の育児と同じように、フトアゴヒゲトカゲの飼育でも個体差が大きいということです。
性格や飼育環境、成長ペースも違いがありますので、本記事の内容はあくまで参考程度に、個体に合わせて柔軟に対応していくことが何より大切です。
フトアゴヒゲトカゲの飼育を検討されている方にとって、本記事が少しでも参考になれば幸いです。
生き物大好き2児の母。フトアゴヒゲトカゲ、レオパ、クサガメ、カナヘビ、昆虫を飼育しています。「こんな情報あったら良いな」と飼育していて実感したことを記事にしていきたいと思います。




































