フトアゴヒゲトカゲは、本来、砂漠などの乾燥地帯に生息していることから、乾燥に強いイメージをお持ちの方が多いでしょう。
しかし飼育下においてはケージ内の湿度が適切でなかったり、水分摂取量が少なかったりといった理由から、『脱水』を起こしてしまうことがあります。
脱水状態を放置していると深刻な体調不良につながる可能性があるため、日頃から様子を観察し、適宜飼育環境を見直すことが大切です。
この記事では、フトアゴヒゲトカゲに見られる脱水のサインと、給水方法について解説します。
脱水に注意しよう

フトアゴヒゲトカゲを始めとした乾燥地帯に生息する爬虫類は、野生では食べ物や植物に付着する朝露などをなめとって水分を摂取します。
飼育下では水入れを設置して水分を補給するよう促すことが多いですが、フトアゴヒゲトカゲにはそもそも水たまりからグビグビ水を飲むような習性がないため、意識して湿度を管理しないと水分不足に陥りやすいです。
脱水は命にもかかわる重大なトラブルで、軽度のうちは見た目の変化がわかりにくいこともありますが、進行すると食欲不振や元気の低下など、様々な体調不良を引き起こします。腎臓に負担をかけて、痛風などの病気のリスクが高まるのも問題です。
脱水の原因

脱水の原因は、主に以下の2点です。
- 飼育環境の湿度不足
- 水分摂取量が少ない
それぞれの原因について、詳しく解説します。
飼育環境の湿度不足
飼育環境の湿度が低すぎる状態が続くと、体内の水分が不足しやすくなります。
湿度不足は脱水だけでなく、脱皮不全や食欲低下、体調不良につながることもあるため注意が必要です。
フトアゴヒゲトカゲ飼育の適切な湿度は、日中で30%〜50%程度、夜間は日中よりやや湿度が上がるため、40%~60%程度を目安にするとよいでしょう。
ケージ内の湿度を上げたいときは、湿らせた水苔を入れたり水入れを設置したりするのが効果的です。さらに定期的に霧吹きをして、ケージ内が乾燥しすぎないように調整するのも良いでしょう。
すでに水入れを設置している場合でも、数を増やすことで湿度の上昇に効果があります。特に素焼き素材の水入れは、ほどよく水分が蒸発しやすいため、湿度を保ちたいときにおすすめです。
冬場は、暖房と空気の乾燥によって水入れの水がどんどん蒸発してしまうことがあります。
水入れの水量や湿度計をこまめに確認するようにしましょう。
湿度が高すぎる場合は、エアコンや除湿器を使って部屋全体の湿度を下げます。
ケージの扉に網を取り付けるなど、通気性を高める工夫も有効です。
また、ケージ内温度が高すぎても脱水の原因になります。
バスキングスポット:35~40℃
クールスポット:25~28℃
の範囲になるよう温度勾配を作りましょう。
水分摂取量が少ない
先ほども触れた通り、フトアゴヒゲトカゲは水入れから直接水を飲まない個体が多いです。
ただ水入れを設置しているだけでは、十分な水分を摂れていない可能性があるため、毎日何らかの形で水分を与える工夫をしましょう。
例えば体重400gの個体の場合、1日あたり2〜4mLほどが目安になります。
水分摂取量が少ない状態が続くと、尿酸の排出が滞りやすくなり尿酸が硬くなって、いきむ時に出血するなどの痛々しい症状が見られることも。(人間で言う、切れ痔です)
また、通常は白色をしている尿酸に黄色や赤などの色がついているときは、深刻な脱水や腎臓、肝機能に異常が出ているサインと考えられます。
水分不足が進むと体内の様々な場所に影響が出るため、日頃から意識して水分補給をさせましょう。
脱水のサイン

爬虫類は、本能的に体調不良を隠すのがとても上手です。
フトアゴヒゲトカゲの脱水を見た目だけで判断するのもかなり難しいですが、いくつかのポイントを覚えておけば異常に気づくヒントになります。
ここでは、脱水のときに現れるサインを5つご紹介します。
「元気がない」「動かない」「食欲が落ちた」など、少しでも普段と違う様子が見られるときは、早めに爬虫類を診察できる動物病院へ相談しましょう。
目がくぼんでいる
体内の水分が不足すると、目の周りが乾燥して落ちくぼむことがあります。
普段より目に活力がない、目の周囲がくすんでいるように見える場合は要注意。
また、目を閉じている時間が長いのも、体調不良のサインとして注意深く観察しましょう。
脱水以外の病気が関係していることもあるため、気になる変化がある場合は早めの受診がおすすめです。
皮膚にハリがない
脱水状態になると、皮膚の水分量が不足してハリがなくなっていきます。
体表にしわが増えたり、皮膚が乾燥してたるんで見えたりする場合は、水分不足を疑いましょう。
特に、普段より体がしぼんだように見える、皮膚の弾力が少ないと感じるのは脱水時に多い変化です。
皮膚の見た目は脱皮前後などの正常な変化としても現れるため見極めが難しいですが、脱皮不全や食欲低下を伴う場合は、脱水や飼育環境の不調を確認してください。
口腔粘膜が乾燥している
口の中の粘膜の乾燥も、脱水のサインとして確認したいポイントです。
健康な個体は、口腔内に適度な湿り気がありますが、脱水が進むと粘膜が乾いて唾液に粘り気が出ることがあります。
口を開けたときに、唾液が糸を引くように見える、口の中が乾いているように見える場合は脱水の影響かもしれません。
ただし、口腔内の異常は、脱水だけでなく口内炎や感染症などが関係している場合もあるため、無理に触らず動物病院で確認してもらうのが賢明です。
尿酸に色がつく
フトアゴヒゲトカゲの排泄物に含まれる尿酸の色も、確認したいポイント。
正常な尿酸は白~クリーム色をしていますが、そこに黄色、オレンジ、ピンク、赤などの色がついていたら、脱水や体調不良のサインの可能性が高いです。
尿酸の異常は、総排泄腔と関係する腎臓、腸、卵巣など様々な原因で起こります。
特に赤い尿酸は、腸壁や内臓から出血している可能性があるため、速やかに爬虫類を診察できる動物病院を受診しましょう。
※赤い尿酸の写真が出ます。
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筆者が飼育しているフトアゴヒゲトカゲも、先日赤い尿酸が何回か続き、便を持参した上で受診しました。
エコー検査・血液検査・尿酸検査の結果、脱水による軽い貧血を起こしてヘモグロビン等の血中色素が尿酸に染みついていたとのこと。
また、水分不足によって便秘になっていたため、便が体内に留まる時間が長くなり食べ物の色素による影響もあるだろうという診断を受けました。
現在は医師の指示により、薄めた経口補水液を、毎日4mL(体重の1%)与えて経過を観察を続けており、まだ白い尿酸にはならないものの、クリーム色の尿酸まで改善されました。
(経口補水液はそのまま与えると、塩分過多になり逆に脱水になってしまうため、必ず医師の指示の元、実践してください。)
水分を摂らせている“つもり”になって、結果として水分不足を引き起こしたことを猛省しています。
しっかりと水分量を測ることが大切だと痛感しました。
・・・それにしても、ウンチの形が漢字の「入」ですね。笑
食欲や活動が低下
脱水が進むと食欲や活動量が低下し、いつも食べている餌に反応しない、バスキングスポットに移動しない、じっとしている時間が長いといった変化が見られることがあります。
ただし、食欲不振や活動量の低下は、爬虫類に起こる異変で最も多い症状です。脱水以外にも温度管理の不備、消化不良、感染症、代謝性骨疾患、産卵関連のトラブルなど、様々な原因が考えられるため、原因を決めつけずあらゆる可能性を念頭に、他の症状がないか観察することが重要となります。
普段と違う状態が続くときは自己判断で様子を見すぎず、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。
水分補給の方法

フトアゴヒゲトカゲに十分な水分を摂取させるには、水入れを設置するだけでなく、霧吹きでケージ内に水滴をつけたりフードに水分を含ませたりなど、生体の習性に合わせた工夫が必要です。
個体によって反応しやすい給水方法が異なるため、その子に合った方法を根気よく探していきましょう。
また、水分は多ければ多いほど良いというものでもありません。
与えすぎて下痢を起こすと、かえって脱水を加速させてしまうリスクがあるため、排泄物の状態を確認しながら、個体に合った水分量を見極めることが重要です。
ここでは、フトアゴヒゲトカゲに水分を摂取させる方法を解説します。
霧吹きをして水滴をつける
ケージ内に霧吹きをして壁面やレイアウト用品に水滴をつけておくと、舐めて水分を補給できます。
野生下のフトアゴヒゲトカゲは、朝露を舐めて水分を摂取するため、霧吹きは自然に近い給水方法の一つです。
特に、水入れから水を飲む習慣がない個体は、霧吹きによる水滴のほうが反応が良いケースがあるため、試してみるとよいでしょう。
ライト点灯後の活動し始めるタイミングに合わせて行うと、興味を示してくれやすいです。
ただ、霧吹きも万能というわけではなく、水滴でも飲まない個体は飲みません。
湿度が上がりすぎると蒸れや体調不良につながることもあるため、湿度計を確認しながら、ケージ内が濡れたままになりすぎないように注意してください。
スポイトで与える

スポイトで口元に直接水を垂らすと、水に気付きやすくなり舐めて飲んでくれることがあります。
最初は警戒して飲まないこともありますが、反応が良い個体は慣れてくるとスポイトを見ただけで反応するようになるでしょう。毎日少しずつ試しながら、ストレスにならない範囲で続けてみるのがポイントです。
ただし、スポイトを使用するときは無理に口の中へ入れたり、強く押し出したりしないように注意してください。
むせたり、スポイトの先端を食い千切ったりして誤飲してしまう可能性があります。
水は、口元に少量ずつ垂らすことを意識して、本人が舐めるペースに合わせて与えましょう。
水の”動き”を見せる
フトアゴヒゲトカゲは、動くものに反応しやすい性質があります。
そのため、目の前で水入れを軽く揺らして水面をチャポチャポと動かしたり、水を注いで流れを見せたりすると、興味を示して舐めることがあるでしょう。
水入れに気づいていないだけの場合は、水を動かすことで存在を認識してくれるので、飲むきっかけ作りにも最適です。
生きた昆虫などの餌に反応する感覚に近くなり、口を近づける個体もいます。
ふやかしたフードを与える
ぬるま湯でふやかした人工フードを与えるのも、水分補給に役立ちます。
ふやかしたフードは消化が良く保水性が高いため、水に反応しない個体にも無理なく水分を与えられるでしょう。
また、ペースト状のフードを活用するのも効果的です。
どうしても水を飲まない日は、ふやかしフードを使った水分補給が無理なく続けやすいです。
野菜を与える

野菜から水分を摂取させる方法も、フトアゴヒゲトカゲの給水方法として取り入れやすいです。
与える前に野菜を軽く濡らしておくと、野菜そのものが持つ水分に加えて、表面についた水も一緒に摂取できます。
サニーレタスなど、水分を多く含む野菜を取り入れるとより効果的です。
ただし、水分量の多い野菜ばかりを与えると便がゆるくなることがあるため、排泄物の状態を見ながら調整しましょう。
また、毎日同じ野菜を与えていると、食べ飽きてしまう個体もいます。
食べが悪くなってきたら小松菜、チンゲン菜、サニーレタスなど、様々な野菜を組み合わて与えてみてください。
トマトなどの糖分が高い野菜や、果物は嗜好性が高い一方で、与えすぎると肥満の原因になります。
おやつ程度に少量を与えるようにしましょう。
まとめ|フトアゴヒゲトカゲの脱水対策!脱水のサインと給水方法について解説

フトアゴヒゲトカゲは、乾燥した環境に適応した爬虫類ですが、水分補給が不要なわけではありません。
水分不足により脱水になると、目のくぼみや皮膚のハリの低下、口腔粘膜の乾燥、尿酸の色などに変化が見られ、体調不良を引き起こします。
フトアゴヒゲトカゲは水入れに反応しづらい個体も多いため、毎日体重の0.5~1%の量の水分を目安に、野菜やふやかしたフード、霧吹き、スポイトなどを使いながらその子に合った方法で水分を摂取させましょう。
爬虫類は不調を隠しやすい生き物です。
普段と違う様子があれば早めに動物病院を受診し、日頃から湿度管理と水分補給を意識して健康を守りましょう。
生き物大好き2児の母。フトアゴヒゲトカゲ、レオパ、クサガメ、カナヘビ、昆虫を飼育しています。「こんな情報あったら良いな」と飼育していて実感したことを記事にしていきたいと思います。





















